一般に雅楽は「神社の音楽」「宮廷の芸能」として認識されていることが多く、実際に宮内庁式部職楽部をはじめ、全国の有力な神社仏教寺院にも雅楽を実演する部門を持っているところがあります。当会は日本雅楽を「神社の為の儀礼音楽」としてのみならず、「シルクロード=アジアの独立した公演芸術」として捉える立場から、三田徳明によって2001年に設立された「雅楽瑞鳳会」を母胎とし、より高度な文献・実技研究を目指して2010年に創設されました。
現在の雅楽は明治時代に制定された「明治撰定譜」をもとに上演されていますが、京都方楽家・安倍家には江戸時代以前の古い楽譜がたくさん現存しています。当会はこれら安倍家の資料を中心とした伝統雅楽の「文献研究」「実技研究」を行う一方、一般向けに「実技指導」「啓蒙公演」などを実施しています。 また、中国、臺灣、韓国、ヴェトナムなどの研究機関・文化機関の要請に応じ、故郷アジアへの雅楽の里帰り事業を展開するなど、国内外で精力的に活動しています。
当会研修部には、高校生以下の「こどもクラス」と実演家養成のための「本科」コースがあり、楽器演奏・舞楽・歌謡を総合的に学んでいます。
日本雅楽は上代より伝わる「(1)皇室・神道系の歌舞」と5世紀以降伝来する「(2)アジア諸国の楽舞」に「(3)平安期の新作歌謡」が加わり集大成されたアジアの総合音楽・舞踊芸術です。日本では宮廷・神社・仏教寺院で年中行事、祭儀や法要の際に BGM や奉納舞踊として繰り返し演じられ、平安貴族にとっては必須の教養でもありました。同時代の音楽・舞踊は日本以外の地域では既に消滅しているため、日本雅楽は「世界最古のオーケストラ」「シルクロード=アジアの総合芸術」とも言われます。
特に第2のカテゴリーには唐楽・林邑(ヴェトナム)楽・天竺(インド)楽・高麗楽・渤海楽などが含まれ、往時のアジア芸能の面影を今に伝えるものであるため、近年はアジア諸国でも自国文化の再考・再興のための有力な資料として日本雅楽は大いに注目を集めています。
今回は唐楽舞楽「蘭陵王(らんりょうおう)」と高麗楽舞楽「納曽利(なそり)」を上演します。