松尾塾伝統芸能は、昭和63年から28年間続いた松尾塾子供歌舞伎の「伝統芸能を通して子供たちに日本人の心を伝えたい」という志しを受け継ぎ、平成28年公益財団法人松尾芸能振興財団の育成事業として開塾しました。日本伝統芸能を本格的に学びたい、幼少期に伝統芸能に触れた経験はあるが更に極めたい。将来、日本伝統芸能に進む道を模索している青少年の道標になり、この世界の門戸を開く手伝いをしたいという思いで始めた伝統芸能の稽古場です。
「子供たちにこそ本物を」そして、「本物を体得させるのが真の教育」の思いから、野村万作先生をはじめとする伝統芸能界の第一線で活躍する一流の講師陣により本格的な指導を行っています。子供の真っ白な心だからこそ、基礎から本物に接し、感性を磨き、技を身につけていきます。
現在、小学2年から中学2年の塾生が、狂言・日本舞踊・長唄・鳴物の稽古に励んでいます。
松尾芸能振興財団の創立者である松尾國三は、昭和9年2世市川猿之助公演を北京・上海・広州で行い、翌年には京劇界の名優、梅蘭芳を日本に招き京劇公演を果たした人物です。その後、平成3年には中国少年有効芸術団を招聘。大阪公演を実施し松尾塾子供歌舞伎と日中の文化交流も果たしました。
本年8月9日、中央区日本橋公会堂にて第1回松尾塾伝統芸能公演を開催いたします。
狂言は、今から600年ほど前、室町時代に能とともに成立した、日本特有の伝統芸能です。
奈良時代に中国から伝わった種種雑多な芸能が、平安時代中ごろには大衆向けの滑稽な芸能「猿楽(さるがく)」となり、さらに寺社芸能や農村の芸能、田楽、白拍子などの影響を受けながら姿を変えていきました。現在のような上演形式になったのは江戸時代、幕府の式楽に定められてからのことです。
現在、狂言は能と合わせて、「能楽(のうがく)」と呼ばれています。「能楽」は2001年、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。 能の多くが荘重・悲壮な内容であり、舞歌を中心とした幻想的・象徴的な劇であるのに対して、狂言はセリフとしぐさを中心とした写実的・喜劇的な対話劇です。
内容も現実に根ざしたものが多く、筋も単純。 登場人物も二、三人だけのものが多く、能と違って歴史上の人物もほとんど登場しません。 おろかな大名、たくましい家来、ものほしげな僧、わわしい妻、こけおどしの山伏、愛しげな鬼、はては猿、狐、狸、蚊の精までが登場し、日常的な事柄のうちに、庶民の誰もが持っている生活感情の機微を洗練された笑いに表現しています。能楽の大成者・世阿弥は、品のいい笑いを生み出す「幽玄の上階のをかし」であれと言っています。
この狂言の笑いこそ真に人間らしい感情の表出であり、健康で大らかな人間への賛歌であると言えるでしょう。